事例紹介

処分の難しい不動産を相続した場合の対処方 その1

はじめに

弊所では毎月相続登記を40~50件ほどご依頼いただいております。対象の物件の中には全く使わない戸建てや別荘があったり、バブルの頃の原野商法で購入したまま放置されていた土地があったりと、処分の難しい不動産もあります。いわゆる負動産というものです。そういった物件の登記のご相談があった場合、ご依頼者様がお困りであれば、弊所では登記から一歩踏み込んで、その不動産の利用状態や今後どうしたいのかをヒアリングし、それにそった解決策をご提案するようにしています。処分困難不動産はいくつかのパターンに分かれます。パターンもかなり多いため、何回かに分け、実例を交えて解決策をご紹介します。

ケース1 実家(田舎でも都会でも)

田舎とはどこからが田舎かという問題は難しいですが、私は時価<固定資産税の評価額となるエリアを田舎と定義しています。さて、田舎でも都会でも実家は処分が難しいといえます。理由は共通するものと、それぞれ独自のものがあります。

まずは田舎の場合。単純に売れないほどの田舎のエリアである、相続人達の帰る場所が無くなってしまう、売ると近所の親戚が煩い、親族が住んでいる、などの理由があげられます。心情的なものはさておき、全く売れないエリアというものはあまりありません。どんな地方に行っても、人が住んでいる限り不動産屋というものはあります。ただ金額は0円どころかマイナスになることもあります。建物がある場合、取り壊し費用を考えないといけないためです。親族が住んでいる場合、その親族に買い取ってもらったり、第三者の投資家にリースバックで売却するといったことが考えられます。

直近の事例で、長野の実家にご兄弟が住んでいる状態で相続した物件のご相談があり、弊所の関連の不動産会社が間に入ってお話をさせていただき、最終的に現地のご親族に買い取ってもらってリースバックでそのままご兄弟が住むという解決をさせていただきました。

最近は、売りたくはないが管理が大変、といった場合に民泊を利用するという解決策もあります。

都会の場合、心情的な問題は田舎と同様ですが、特有の問題として物件の価格が高いということと相続税があります。

物件の価格が高いというのは、相続人の中で話がこじれやすくなる原因です。田舎の実家であれば、「長男が継いだら?」「妹が親の面倒を見ているから家は妹にあげる」なんてことがありますが、東京の一等地に戸建てがあれば時価1億円くらいは簡単にいってしまいます。この家を長男だからという理由で全部譲るという仲のいい兄弟姉妹だけであればよいのですが、そんなことはまずありません。長男は同居していて自分が欲しい、次男は売却してお金が欲しいetc。長男に代償金を支払う余裕があればいいですが、5千万円のキャッシュをポンと出せる人はあまりいません。こういった事例は実際によくあり、解決方法は様々ですが、一例として住宅ローンを利用して長男が他の相続人から購入するという解決策があります。基本的に親族間売買は住宅ローンを利用できません。なぜなら売買金額の適正性や担保評価が難しいので銀行が嫌がるからです。しかし、絶対に無理ということはなく、地銀や信金さんであれば、条件次第でローンを出してくれることもあります。条件としては①仲介業者を入れること、②価格の妥当性についてなにかしらの根拠を示すこと、③地元の士業の紹介、といったケースが多いです。弊所では①~③のいずれも実際にお手伝いしたことがあります。

ケース2 別荘

代表的な負動産として別荘があります。もちろん、素晴らしい別荘地も沢山ありますが、バブルの頃は別荘がそこらじゅうで開発されましたのでバブルの遺産といえます。

別荘と一口に言っても様々ですが、いくつかのパターンに分かれます。まず、別荘地としてデベロッパーが開発・分譲し、そのまま系列の会社で管理をしている別荘があります。このタイプの別荘は、デベロッパーが破綻していたりすると、管理が適切にされておらず処分に大変苦労します。大手のデベロッパーの場合、管理費は掛かりますが、それなりに管理運営がされていることが多く、また売却に関してもある程度手伝ってくれますので、比較的処分はしやすいです。軽井沢などはエリアによって非常に高額な人気別荘もあれば、全く売れない北の方の別荘もあり、別荘地としての成り立ちと管理が大切です。なお、管理費の他に温泉があると温泉の利用料が掛かることもあり、それも処分の難易度を上げています。弊所では年に数件は別荘をそのままもらってくれないかという相談がありますが、大体毎月数万円のコストが掛かる物件です(丁重にお断りしています)。

また、特に管理会社などが無く、エリア的に別荘がたくさんあるということもあります。箱根の仙石原などが代表的です。このような物件は多少時間は掛かりますが、欲しがる人がいるエリアであれば処分は比較的容易です。建物は経年劣化がある物件が多いので、その点は難しくはあります。こういったエリアの場合、建物が建っていない土地の状態だと売れる物件と売れない物件は個別差が激しく、現地次第となります。土地は安くとも、建築費はどこのエリアでも平等に掛かりますので、あえてその土地で建てる売りのようなものがないと処分に苦労します。

別荘エリアに特有の問題として、別荘組合があって組合の規約があることがあります。この規約が異様に厳しかったり、民泊を禁止していたり、新規で組合に入ってくる人を排除するような内容になっている排他的な規約だと購入者が怯んでしまい、売却が難しくなります。

時代が所有から利用する方向に変わっている現代において、別荘を保有するのはかなりの贅沢といえます。もし相続してしまった場合、本当に利用するのか否かよく考え、利用する頻度が低くなりそうであれば早めの処分をお勧めします。

(文責:神楽坂法務合同事務所 庄田)

このコラムの監修者

しょうだ かずき庄田 和樹
司法書士
東京都エリア担当
所属:司法書士法人 神楽坂法務合同事務所

相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。

しょうだ かずき庄田 和樹

相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。

司法書士・税理士を探す

初回相談無料