はじめに

相続手続きは多岐にわたり、法律、税金、不動産などさまざまな分野の専門知識が必要です。そのため、スムーズな相続を進めるには、司法書士、税理士、弁護士といった士業の力を借りることが欠かせません。それぞれの士業がどのような場面で活躍するのかを知ることで、適切な相談先を見つけやすくなります。本記事では、司法書士、税理士、弁護士を中心に、相続に関わる各士業の役割をわかりやすく解説します。

司法書士の役割：不動産の名義変更や登記手続き

司法書士は、主に相続登記（不動産の名義変更）や遺産分割協議書の作成で活躍します。
主な業務内容
1. 相続登記（不動産の名義変更）
被相続人（亡くなった方）の名義となっている不動産を相続人に移転する手続きです。
例：家や土地を親から子どもに相続する場合の名義変更。
2. 遺産分割協議書の作成
相続人全員で遺産の分け方を決める際、その内容をまとめた書類を作成します。遺産分割協議書は相続登記や金融機関の手続きで必要です。
3. 法定相続情報一覧図の取得
戸籍謄本の束を1枚の書類で代用できる「法定相続情報一覧図」の取得手続きも、司法書士に依頼可能です。
メリット
司法書士は、不動産登記や相続人調査のプロフェッショナルであり、迅速かつ正確な手続きを実現します。

税理士の役割：相続税の申告や節税対策

税理士は、主に相続税の申告や節税のアドバイスで重要な役割を果たします。
主な業務内容
1. 相続税の申告と納付
相続税の申告が必要な場合（課税遺産総額が基礎控除額を超える場合）、申告書の作成や納付手続きは税理士が担当します。
例：土地や建物、預貯金などを含む遺産総額が基礎控除額を超えるケース。
2. 財産評価
不動産や株式などの評価額を算定し、相続税額を適切に計算します。
3. 節税アドバイス
生前贈与や保険の活用など、相続税を軽減するためのアドバイスも提供します。
メリット
税理士は、複雑な税務の知識を活かし、相続税の適正な申告や節税対策を行う専門家です。特に大規模な資産を相続する場合や、評価が難しい財産を含む場合には必須の存在です。

弁護士の役割：相続争いの解決や法的トラブル対応

弁護士は、相続人同士の争いやトラブル対応において活躍します。
主な業務内容
1. 遺産分割調停や裁判
遺産分割で相続人間の意見が対立した場合、家庭裁判所での調停や訴訟を代理します。
例：相続人間で遺産の取り分について揉めた場合。
2. 遺留分侵害額請求の代理
遺言で相続分が極端に少なくされた場合、最低限の取り分である「遺留分」を請求する手続きを代行します。
3. 遺言書の紛争対応
遺言書の内容が不明確だったり、無効を主張されたりした場合に、その有効性を争う法的手続きを行います。
メリット
弁護士は、相続に関する法的トラブルの解決に向けた交渉力と裁判対応のプロフェッショナルです。相続争いが発生する可能性がある場合は、早めに相談することで紛争を予防できます。

その他の士業との連携

相続は複雑な問題が絡み合うため、司法書士、税理士、弁護士以外の士業と連携することもあります。
● 行政書士：戸籍収集や遺言書作成のサポートなど。
● 不動産鑑定士：不動産の正確な評価額を算定。
● 土地家屋調査士：不動産登記に必要な土地や建物の境界確認や測量を担当。
これらの士業が連携することで、相続全体を効率的かつ正確に進めることができます。

まとめ

相続手続きでは、司法書士、税理士、弁護士がそれぞれ異なる専門分野で役割を担っています。不動産登記や書類作成なら司法書士、相続税申告なら税理士、争いの解決や調停なら弁護士が適任です。また、行政書士や不動産鑑定士など、他の士業と連携する場面も多く、士業間の協力が円滑な相続の鍵となります。相続の際には、自分がどのような課題を抱えているかを整理し、適切な士業に相談することで安心して手続きを進められるでしょう。
（文責：司法書士　金光 康太）