遺言を作成した方がよいケース①│財産の分け方を決めておきたい場合
「うちにはそんなに財産もないし、遺言なんて必要ない」と思っていませんか?その認識、実は少し違うかもしれません。
たとえ全財産が自宅と預貯金数百万円くらいであっても、「家族・親族関係」や「財産の分け方」に不安がある方は、遺言を書いておくべきなのです。
なぜ遺言を書く必要があるのか?
遺言がない場合の相続手続は、基本的に以下の流れで行います。
- 戸籍収集・財産調査
- 相続人全員での話し合い(遺産分割協議)
- 話し合いに従った財産の分配
その中で何よりもネックになるのが、「②相続人全員での話し合い」でしょう。親子だけであればまだいいものの、場合によってはおじやおば、義理の甥姪、腹違いの兄弟など、会ったこともないような人との話し合いをする必要が出てきます。また、親子や兄弟であっても、仲が悪い場合は、話し合いどころではないでしょう。
【注意】判断能力に関する問題
忘れがちなのが、「認知症や障害で判断能力が十分でない人がいると、遺産分割協議が難しくなる」ということです。成年後見制度を用いることで協議自体は可能になりますが、後見人を降りることはできないため、慎重に判断する必要が出てきます。これは、家族仲とは別問題です。
財産が少ししかなかったとしても、自分の死後の争いを避けたり、相続手続をスムーズに進めたりするためにも、遺言を書いておくべきなのです。
書いておくべき場合3種
これから3回にわたって、遺言書を書いておくべき場合と、具体的なケースを紹介していきます。
- 今回:「財産の分け方を決めておきたい場合」
- 次回:「子供のいないご夫婦やおひとりさまの場合」
- 次々回:「推定相続人の中に、海外居住者や認知症の方がいる場合」
財産の分け方を決めておきたい場合
山本さんは、妻との間に長男、次男、長女の3人の子がいます。財産は、若い頃建てた自宅のほか、先祖代々引き継いできた土地と、これまで貯めてきた預貯金が約1,500万円あります。
- 長男:結婚して近所に居住。よく顔を出してくれる。
- 次男:独り身で県外居住。経済的に余裕がある。
- 長女:夫・子供と一緒に、山本さん夫婦と同居中。
このようなケースで、遺言を書こうとは中々考えないのではないかと思います。しかし、本当にそれでいいのでしょうか?山本さんの立場になって考えてみましょう。
まず、自宅は誰に相続させたいでしょうか?今後の生活のことを考えると、妻か、今一緒に住んでいる娘に相続させるべきでしょう。
では、先祖代々引き継いできた土地は、誰に相続させたいでしょうか?山本さんからすると、長女には申し訳ないですが、やはり「山本」という名前を登記簿上でも引き継いでいきたいと思っているため、長男か次男に相続させるべきだと思っています。
最後に、預貯金についてはどうでしょうか。自分が妻より先に死んだとすると、妻の今後の医療費や施設費は遺しておくべきでしょう。長男や長女は子供もいるので、今後の学費等の足しにしてあげたいと思います。また、次男はお金を持て余しているようなので、最低限の分だけ遺してあげればよさそうです。
このように見ていくと、「誰に、どの財産を相続させたいか」というのが、なんとなく山本さんの中で固まっていることが分かります。にもかかわらず、遺言書を書いていないと、遺産分割協議次第では山本さんの考えが反映されない可能性が出てきてしまいます。
まとめ
このように、「この財産は誰に相続させたい」という気持ちが固まっている場合は、遺言を作成しておくべきです。
他にも、以下のようなケースがあるでしょう。
- 「最期まで面倒を見てくれた長女に、多く財産を残したい」
- 「お金にだらしない長男には任せられないので、自宅や賃貸アパートは必ず次男に相続させたい」
財産の額にかかわらず、相続に関する自分の意思を明確に遺しておきたい場合は、遺言書の作成を検討しましょう。
このコラムの監修者
- 司法書士
- 熊本県エリア担当
所属:司法書士法人小屋松事務所
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