遺言の執行2
遺言執行者の権限と相続人の行動制限
遺言の執行において、遺言執行者の役割は遺言者の意思を法的な形で実現することにあります。この実行力を担保するために、民法は相続人の行為を制限し、特定財産に関する遺言について詳細な規定を設けています。
1. 相続人による妨害行為の禁止
遺言執行者が存在する最大の効果の一つは、相続人の行動が制限されることです。
- 相続人の行為制限: 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません(民法1013条1項)。
- 違反行為の効力: この規定に違反して相続人が行った行為は無効とされます。ただし、その無効をもって善意の第三者に対抗することはできません(1013条2項)。
- 債権者の権利: これらの規定は、相続人の債権者が相続財産についてその権利を行使すること自体は妨げません(1013条3項)。
2. 特定財産に関する遺言の執行
遺言が相続財産全体ではなく、特定の財産に関するものである場合、執行に関する規定は、その特定の財産についてのみ適用されます(1014条1項)。
特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)の場合
遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人に承継させる場合、遺言執行者は以下の行為を行うことができます。
- 対抗要件の具備: 承継者が第三者に対して権利の承継を対抗するための要件(不動産の登記等)を備えるために必要な行為(1014条2項)。
- 預貯金の払戻し・解約: 対象が預貯金債権である場合、払戻しの請求や解約の申入れが可能です。ただし、解約は預貯金債権の全部が対象である場合に限られます(1014条3項)。
※これらの規定は、遺言に別段の意思表示がない限り適用されます(1014条4項)。
3. 遺言執行者の解任・辞任と任務終了
遺言執行者の職務継続が困難、または不適切な場合には以下の手続きが定められています。
- 解任: 任務を怠った場合や正当な事由がある場合、利害関係人は家庭裁判所に解任を請求できます(1019条1項)。
- 辞任: 正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(1019条2項)。
- 報告義務: 任務終了後、執行者は遅滞なくその経過及び結果を報告し、受け取った金銭などを引き渡す義務があります(1020条、645条等準用)。
4. 費用と報酬について
遺言執行に関する実務的なコストについては以下の通りです。
- 執行費用: 原則として相続財産の負担となります(1021条本文)。
- 報酬: 遺言で定めがない場合、家庭裁判所が相続財産の状況などを考慮して定めることができます(1018条1項本文)。
【ご注意】
本記事は民法の規定に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。具体的な相続事案や遺言執行の手続きについては、個別の状況により判断が異なるため、必ず弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。
このコラムの監修者
- 司法書士
- 千葉県エリア担当
所属:松田事務所
相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の松田と申します。
司法書士をしていると、普通に生活していれば出会う事もなかったであろう人と、お仕事を通じて出会えることができ、面白いと感じております。しかも、マイホームの購入、ローンの完済、相続の開始等、皆様の人生において重要な節目に立ち会わせて頂くことができ、ありがたい職業です。
多くの方は、ご両親の相続を二度経験し、ご自身の相続を一度迎えることになります。相続と言っても、法律関係・税務関係・不動産売却等様々な要素が重なりあっております。一度や二度の経験では大変難しいものだろうと思います。幸いなことに、お客様から頂いたお仕事を通じ、様々な相続を経験してきました。お客様の相続を最善の相続にできるよう、私の経験をお客様に還元できればと思います。
相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の松田と申します。
司法書士をしていると、普通に生活していれば出会う事もなかったであろう人と、お仕事を通じて出会えることができ、面白いと感じております。しかも、マイホームの購入、ローンの完済、相続の開始等、皆様の人生において重要な節目に立ち会わせて頂くことができ、ありがたい職業です。
多くの方は、ご両親の相続を二度経験し、ご自身の相続を一度迎えることになります。相続と言っても、法律関係・税務関係・不動産売却等様々な要素が重なりあっております。一度や二度の経験では大変難しいものだろうと思います。幸いなことに、お客様から頂いたお仕事を通じ、様々な相続を経験してきました。お客様の相続を最善の相続にできるよう、私の経験をお客様に還元できればと思います。