相続コラム

生前贈与の「7年ルール」はいつから効いてくる?2027年以降の相続から変わる持ち戻し期間と、相続時精算課税の使い分けを税理士が解説

生前贈与の「7年ルール」はいつから効いてくる?2027年以降の相続から変わる持ち戻し期間と、相続時精算課税の使い分けを税理士が解説

「毎年110万円ずつ子どもに贈与しているが、このままでいいのか」——2024年の税制改正以降、このご相談が一気に増えました。

改正の柱は2つです。1つは、暦年贈与の相続財産への持ち戻し(生前贈与加算)期間が3年から7年に延長されたこと。もう1つは、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されたことです。

「7年ルール」という言葉だけが独り歩きしていますが、実はこの改正、2026年中に発生した相続まではまったく影響がありません。影響が出始めるのは2027年(令和9年)以降に開始する相続からです。つまり今は、延長の影響が本格化する前の、対策を見直すべきタイミングといえます。この記事では、経過措置の正確な仕組みと、2つの贈与制度の使い分けを解説します。

生前贈与加算とは:贈与しても「なかったこと」にされる仕組み

暦年贈与では、受贈者1人あたり年110万円までの贈与に贈与税がかかりません。しかし、贈与者が亡くなった場合、死亡前一定期間内の贈与は、110万円以下の非課税分も含めて相続財産に足し戻して相続税を計算します。これが生前贈与加算(持ち戻し)です。

この期間が、従来の「死亡前3年」から「死亡前7年」へと延長されました。単純にいえば、駆け込みの贈与が効かなくなる期間が4年分延びたということです。

なお、延長された4年分(死亡前3年超〜7年)の贈与については、その総額から100万円を控除できる緩和措置があります。「年100万円」ではなく「4年分の合計から100万円」である点はよく誤解されるところです。

 

経過措置:影響が出るのは2027年以降の相続から

7年への延長は、2024年1月1日以降に行われた贈与から適用されます。それより前の贈与が7年分さかのぼって加算されることはありません。その結果、加算期間は相続開始の時期に応じて次のように段階的に延びていきます。

相続開始の時期

加算対象となる贈与

〜2026年12月31日

死亡前3年以内の贈与(従来どおり)

2027年1月1日〜
2030年12月31日

2024年1月1日から死亡日までの贈与(3年超〜7年未満に段階的に拡大)

2031年1月1日〜

死亡前7年以内の贈与(完全移行)

 

たとえば2028年6月に相続が開始した場合、2024年1月1日以降の約4年半分の贈与が加算対象になります。完全に7年分が加算されるのは、2031年以降に開始する相続からです。

実務的な含意ははっきりしています。贈与による対策は、早く始めるほど加算の網にかからない期間が長くなるということです。「そのうち考える」で数年が経過すると、その間の贈与がまるごと持ち戻される事態になりかねません。

加算されるのは「相続で財産をもらう人」だけ

見落とされがちですが、生前贈与加算の対象になるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人への贈与だけです。

したがって、相続人ではない孫や子の配偶者への贈与は、7年ルールの影響を原則として受けません。何年前の贈与であっても持ち戻しの対象外です。ただし、次の場合は孫でも加算対象になるため注意が必要です。

  • 代襲相続人として相続する場合
  • 遺言で財産を受け取る(遺贈を受ける)場合
  • 死亡保険金の受取人になっている場合

「子への贈与は加算リスクを踏まえて設計し、孫へは暦年贈与を活かす」という切り分けは、改正後の定番の考え方の一つです。

もう一つの選択肢:相続時精算課税の「年110万円控除」

今回の改正で実務的なインパクトが大きかったのは、むしろ相続時精算課税制度の見直しです。

相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円までの特別控除を使って贈与時の税負担なく財産を移し、相続時にその贈与財産を持ち戻して精算する制度です。従来は「結局全額持ち戻されるうえ、少額でも毎回申告が必要」という使い勝手の悪さから、選択する人は限られていました。

これが2024年から大きく変わりました。受贈者1人あたり年110万円の基礎控除が新設され、この範囲内の贈与は、

  • 贈与税の申告が不要
  • 相続時の持ち戻しも不要(何年前の贈与かを問わず、相続財産に加算されない)

となったのです。暦年贈与の110万円非課税枠が死亡前7年分持ち戻されるのに対し、精算課税の110万円は直前の贈与でも加算されません。高齢の親から子への少額贈与に限れば、精算課税のほうが有利になる場面が明確に生まれました。

精算課税を選ぶ前に知っておくべき注意点

ただし、精算課税は「一度選んだら戻れない」制度です。選択前に、次の点は必ず押さえてください。

  • 暦年課税には二度と戻れない(その贈与者からの贈与について)
  • 最初の贈与の翌年2月1日〜3月15日に選択届出書の提出が必要(提出を忘れると多額の贈与税が課されるリスク)
  • 精算課税で贈与した土地には、相続時に小規模宅地等の特例(最大8割評価減)が使えない
  • 不動産の贈与には、相続と比べて高い登録免許税(0%。相続なら0.4%)や不動産取得税がかかる
  • 110万円を超える部分は贈与時の価額で持ち戻されるため、値下がりした場合は不利に働く(逆に値上がりが見込まれる財産には有利)

とくに自宅や賃貸不動産の贈与を考えている方は、小規模宅地等の特例が使えなくなるデメリットが節税効果を上回ることが少なくありません。金融資産と不動産で制度を使い分ける視点が重要です。

暦年課税と精算課税、どう使い分けるか

判断の軸を整理すると、おおむね次のようになります。

  • 贈与者が高齢で、相続開始までの期間が長くない見込み → 精算課税の年110万円が有利になりやすい(直前贈与でも加算されないため)
  • 贈与者が比較的若く、10年以上の長期で移転できる → 暦年課税で110万円超の贈与も組み合わせ、加算期間の外に財産を移す戦略が有効
  • 孫など相続人以外への贈与 → 暦年課税のまま(そもそも加算対象外)
  • 値上がりが見込まれる資産(自社株など) → 精算課税で贈与時の評価額に固定する選択肢
  • 相続税がそもそもかからない見込みの家庭 → 加算されても納税額はゼロのため、7年ルールを過度に恐れる必要はない

もっとも、最適解はご家族の年齢構成、財産の内訳、相続税の試算額によって大きく変わります。「なんとなく毎年110万円」を続けるのではなく、一度立ち止まって全体設計を確認する価値は十分にあります。

まとめ:2026年は「見直しの最終適齢期」

繰り返しになりますが、7年ルールの影響は2027年以降に開始する相続から段階的に現れ、2031年以降の相続で完全移行します。裏を返せば、これから始める贈与は、時間が経つほど加算対象から外れていきます。対策の価値は「いつ始めるか」でほぼ決まるといっても過言ではありません。

ご自身のケースで暦年課税と精算課税のどちらが有利か、いくらずつ・誰に贈与すべきかは、相続税の試算とセットで検討する必要があります。相続太郎には相続税に精通した税理士が所属しており、ホームページからのお問い合わせなら初回相談30分は無料です。贈与の設計図を作る第一歩として、お気軽にご相談ください。

 

このコラムの監修者

しょうだ かずき庄田 和樹
司法書士
東京都エリア担当
所属:司法書士法人 神楽坂法務合同事務所

相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。

しょうだ かずき庄田 和樹

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法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
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