処分の難しい不動産を相続した場合の対処法 その2
はじめに
前回に引き続き、処分の難しい不動産について、ケース3とケース4をお届けします。ケース4では大きな土地としていますが、相続税が掛かるような物件であれば共通する部分も多いため参考になれば幸いです。
ケース3 リゾートマンション・ゴルフ会員権
別荘と同様に負動産として有名なのはリゾートマンションです。リゾートマンションの負動産ぶりを有名にしたのは越後湯沢でしょうか。バブルの頃に建てられたマンションがゴースト化し、使いもしないのに毎月数万円の管理費を永遠に支払うという正に負の遺産です。弊所でも実際にこのような物件を相続した相続人様からの依頼で、お金を支払って引き取る業者さんを探して取引したことが何度かあります。
マンションに特有の問題として、高額な管理費と、所有権を放棄できないという問題があります。高額な管理費はそもそも建設当初の管理費の設定が安すぎたり、設備が豪華であったり、温泉があることが原因です。所有権の放棄については、民法では所有権放棄の条文があるのに、実はマンションの所有権は放棄する手続きが存在しないので、放棄できないのです。放棄されると管理組合も困ってしまうので仕方ないといえば仕方ないのですが、法の不備といえます。
リゾートマンションは人気のないものは処分が非常に難しく、はっきりいってどうしようもないこともあります。数百万円支払ってでも手放したいということで、何とか実需で使う方を探して譲渡したこともあります。
ゴルフ会員権には不動産の登記をするものが稀にですがあります。一種のリゾート会員権の様なものです。その場合、問題点は前述のリゾートマンションと同様で、毎年の管理費が負担です。ゴルフ会員権の場合は運営会社がしっかりしていることが多く(しっかりしていないところはとっくに潰れたともいえます)、有償(相続人側が費用を出して)で引き取ってくれることがあり、リゾートマンションよりは助かる可能性が多少高い印象です。
ケース4 大きすぎる土地(主に都会)
都会の大きな土地を相続した場合、亡くなって10か月後の相続税の納税までに遺産分割協議と売却を済ませる必要があり、この時間的制限が問題を難しくします。
物納という手段もありますが、物納は要件がかなり厳しく(一例として建物が建っていると駄目)、あまり利用はされません。
大きな土地を相続した場合、仮に弊所にご依頼いただくとしたら何をどのように進めていくかを、以下順序立ててご説明します。
①相続税のシミュレーション(税理士が決まっていなければまず税理士の選定から)
現時点で一体いくらくらいの相続税が発生し、どれだけキャッシュが足りないのかを確認します。もし物納できそうな土地があればそれも検討します。税理士さんに知り合いがいなければ提携の相続税専門の税理士さんをご紹介して面談等進めていきます。
生前から準備をしている場合は慌てずに済みますが、準備していなかった場合は本当に時間が無いので時間との戦いです。
②誰が何を相続し、どの土地を売却するかの遺産分割協議(またはその前段階での合意)
相続税は相続する人の相続する財産に応じてかかる税金です。そのため必要なキャッシュは相続人ごとに変わります。大抵はそれほどキャッシュリッチな方はおらず、例えば土地を売却して代金を相続人3人で等分にわけるというような方法で相続税の納税原資を調達することになります。物件に住んでいる相続や親族がいることがありますが、そうするとその土地を売却しにくくなり、協議が難航する傾向があります。できれば生前からどう分けるか決めておきたいものです。
③売却を依頼する仲介業者の選定
不動産を売却する際、どの業者に依頼するかは非常に重要です。一般の方は「~市 土地 売却」等と検索して出てきたまとめて見積りサイトなどを利用して、悪徳業者の餌食になります。餌食というのはきつい表現のようですが、実は実態をうまく表しています。池で鯉に餌を投げ入れたシーンを想像してもらうと分かりやすいです。
親族が不動産会社だから、親族の紹介の不動産業者だからということもありますが、利害関係が有るのであまりお勧めはしません。キックバックをもらった云々で泥沼の争いになっているのを何度も見ています。
総じて相続不動産に特有の問題に精通している仲介業者をお勧めします。
決して弊所の関連会社をお勧めしているわけではありませんが(笑)、参考までにホームページを掲載しておきます。
士業不動産サポート株式会社
https://shigyo-support.jp/
④物件の調査
主に仲介業者の仕事ですが、物件についての現地調査、役所調査等で問題の洗い出しをし、査定を進めていきます。
⑤測量、境界確定
直近の地積測量図が無い場合、まずは現況測量をして図面作成したほうが土地は高く売れます。相続税申告にも図面は必要です。高低測量と言って高低差も測る場合もあります。いずれも費用は掛かりますが、土地を売却するにあたって測量は非常に重要な要素です。境界確定ができるか否かで売却金額も大きく変わってきますし、公の道路が前面道路の場合時間が掛かることが多く、短くても3カ月はみないといけません。そのため遺産分割協議が終わっていなくても測量の発注は相続人全員から同意をもらって先にするといった工夫も必要になってきます。このあたりの段取りは慣れた仲介業者でないとできません。
➅相続登記
売却の契約と相続登記をどちらを先にするかはケースバイケースです。よく誤解されている方がいらっしゃいますが、売却の契約は相続登記をしていなくても出来ます。戸籍等で相続人が確定でき、遺産分割協議書で契約する当事者が確定できるので、それらの書類があれば契約はできます。
➅-2 売却の契約
相続登記をしていれば登記名義人となっている相続人が当事者として、相続登記をまだしていなければ相続人全員で契約をします。同じでは?と思うかもしれませんが、遺産分割協議書で名義人となる相続人を決めれば、例えば相続人が5人いてもそのうちの1人を代表にして売却の契約の当事者にし、売却後に経費を除いて5等分するといったことができます。相続人が複数いて仕事をしていると平日に予定を合わせるのが非常に困難になりますので、これはご提案すると非常に喜ばれます。なお、譲渡所得税といって売却益に掛かる税金は、前述した売却して何人かで分ける方法の場合、全員が申告する義務があるというのが一般的な認識です。
➆決済、相続人間での分配、相続税の納税
売買代金の受領と引き換えに登記名義を買主に移します。もし遺産整理業務として一切合切のご依頼をいただいている場合で預貯金等の解約が終わっていれば精算表を作成し、費用や納税資金を除いた額を相続人に振込します。相続税の納税は弊所で代行することが殆どです。実は費用と一言にいっても葬儀関係費用はじめ多岐に渡り、項目としては数百以上になりますので、精算の計算には相応に時間が掛かります。
⑨翌年に譲渡所得税の申告、納税
忘れがちですが、翌年の譲渡所得税の申告と納税迄弊所でフォローしています。申告は勿論税理士さんにお願いしますが、売買の書類等を共有しておくことで依頼者様の手間が大分省けます。
②でも少し記載しましたが、相続した土地を代表相続人の名義にしてから売却して相続人全員で分配した場合、相続人全員が譲渡所得税の申告義務があります。時々悪徳不動産業者に唆されて、小規模宅地の特例が使える相続人の名義にして売却し、その相続人だけ譲渡所得税の申告をしていることがありますが、脱税ですので、バレると加算税が沢山来ます。気を付けましょう。
(文責:神楽坂法務合同事務所 庄田)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 東京都エリア担当
所属:司法書士法人 神楽坂法務合同事務所
相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。
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家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
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