相続コラム

処分の難しい不動産を相続した場合の対処法 その3

はじめに

さて、処分の難しい不動産シリーズもその3まできました。今回は農地と山林など特に富裕層でなくとも相続する可能性が高い物件です。弊所に依頼がある相続登記でも半分以上のケースで自宅以外になにかしらくっついてくることが多いです。ケース6ではそういった困った不動産に使える「相続土地国庫帰属制度」にも触れながら解説していきます。

ケース5 農地

農地には農地法という法律があり、自治体の農業委員会が管理しています。勝手に売買したり、賃貸することはできません。農地は農業の根幹となる資産であり、国単位での戦略があり、その戦略にのっとり管理されています。近年は改正もあり、多少柔軟になってはいますが、まだまだ厳格な管理がされているといえます。
農地を相続した場合、農業委員会に届出をしなければなりません。その上で、自分は農業をしないので農地を手放したい場合、ケースごとにかなり複雑な手続きになります。以下農地のある地域ごとに場合分けをしてご説明していきます。

①市街化区域内の農地の場合
市街化区域、つまり建物をどんどん立てて開発していきましょうというエリアにある農地は、基本的にはかなり簡単に手放すことができます。手続き的には農地法5条の届出、という方法になり、届出なので1週間程で終わります。農地転用届出受理証という書類がもらえますので、これを添付して所有権移転登記をします。
ただ、手続き自体は比較的簡単ですが、これを買う人がいるか否かはまたエリアに拠ります。宅地としての需要があるか、ライフラインはどうなっているか、老人ホームや駐車場など他の用途も検討が必要です。ただ、少なくとも農地として引き継いでくれる人を探すよりは相当ハードルは低いです。

②生産緑地の農地の場合
生産緑地とは大都市圏の中にある農地で、生産緑地法という法律で指定を受けた農地です。大都市での良好な生活環境を確保するためにあえて残している農地です。生産緑地では固定資産税が低く設定されていますが、転用できないなど色々と制限があります。2022年から、法律で指定をされて30年という節目を迎える生産緑地が順次発生しており、生産緑地ブームと言えるものが一瞬ありました。簡単に言うと指定を30年引き延ばすか、指定を解除して売却等するかを選べるというものです。これにより宅地が大量に供給されるのではという話がありましたが、実際にはそのような大きな動きはなく、保守的に動いているようです。
売却、転用するにもいろいろと制限があり、30年の節目でないと基本的には何もできませんので、処分できるか否かは運によります。

③農業振興地域内の農地の場合
俗に「青地」と呼ばれる農地です。このエリア内の土地は農業をある程度大規模に積極的にするために区域が設定されており、基本的に転用することができません。そのため、処分する場合には農転の許可をもらった上で農家に引き継いでもらうことになります。例外的に農振除外という手続きで宅地にすることもできますが、年単位で時間が掛かりますし、費用もそれなりに掛かります。

④市街化調整地域の農地の場合
市街化調整区域とはその名の通り市街化をしないように、農地や自然を残すことを目的としたエリアです。当然市街化区域にある農地よりも転用するためのハードルは高くなり、市街化区域では届出で済んだものが許可を取らないといけなくなります。また、都市計画法上の制限もあり、農地法よりもむしろそちらの制限の方が厳しいため、かなり面倒です。現状が宅地であったり、インフラがあって宅地にできそうな場合、買い取る不動産会社の方でやってくれることもありますが、基本的には建築士や行政書士に依頼して許可を取得したうえで処分することになります。

終わりに
上記いずれの場合も、要するに現状が宅地か宅地にしやすい土地は処分できますが、そうでないと事実上第三者の引き取り手はいません。よほどいい場所、いい形の土地であれば農業法人などが引き取ってくれる可能性はありますが、期待薄です。農地に関しては民間での処分には限界があります。行政の側で一時的にでも引き取ってくれるような制度があればいいなと思う今日この頃です。
処分ができない場合、後述する国庫帰属制度を検討することになります。

ケース6 山林や原野や雑種地(国庫帰属制度の説明も)

先祖から引き継がれてきた山林や原野商法(バブルの頃に流行った詐欺で、いずれ宅地開発されて高くなるからと騙して田舎の土地を買わせる商法です)で買わされてしまった原野や雑種地は困った相続財産の典型例です。固定資産税は安いので、リゾートマンションなどと違って維持コストが比較的安いことはメリットですが、雑種地などは、市街地では草が生えれば除草しないとクレームがきます。また、熱海の土砂崩れの事件で改めて注目されたように、所有者責任というものがあります。簡単に言うと、土地の土砂崩れなどがあったら所有者に無過失責任があるため、きちんと維持管理しないといけない、ということです。処分したいが処分できないという所有者の弱みに付け込んで高額な処分費と引き換えに土地を引き取るという業者がいますが、後々トラブルになりますのでご注意ください。

これらの物件は処分のしやすさは本当にケースバイケースです。こういった物件こそある意味では相続物件専門の不動産会社としては腕の見せ所です。例えば弊所関連会社で実際に取り扱った物件では、山林でも林業の行われるエリアだったり(木は育てるのに何十年と掛かります)、水源地として使える土地なら比較的売却しやすいです。レアケースではタケノコやキノコが取れる土地、キャンプのできる土地、電柱のある土地は比較的人気があります。また、大きな土地であればエリアを問わず太陽光発電可能か否かはまず可能性を検討します。

さて、とはいえ、現実的には引き取り手がいない土地の方が圧倒的に多数です。そんな時、その土地を次世代に引き継ぎたくないというニーズがありますが、令和5年度から始まった相続土地国庫帰属制度が役に立つかもしれません。国庫帰属制度の詳細は法務省にかなり細かく記載があるので、そちらをご覧ください。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html

簡単にいうと
①相続した土地を、②境界を明らかにして、③費用を負担すれば、国が引き取ってくれるという制度です。

注意点としては
・NGな土地が結構たくさんある(建物が建っている、急傾斜地、通路として使っている等)
・境界の復元方法が結構あいまいで難しい(土地家屋調査士が申請の代理人に入っていないのは、入れると厳密にしないといけなくなるから入れられなかったという裏話を法務局で聞きました)
・費用が結構掛かる(80~200万円程掛かることが多い)
※司法書士の報酬が15万~30万ほど、他に測量や境界明示費用で数十万円、国への負担金が一か所最低20万円~
・期間が最低でも10カ月は掛かる
と実はかなりハードルは高いです。弊所でも既に数件申請させていただきましたが、本当に引き取る気があるのかと疑うくらいに厳しく見てきます。民間で引き取り手を多少お金を出してでも探し(登記費用と数年分の固定資産税を払う等の条件で)、いなければ検討するのが現実的です。
(文責:神楽坂法務合同事務所 庄田)

このコラムの監修者

しょうだ かずき庄田 和樹
司法書士
東京都エリア担当
所属:司法書士法人 神楽坂法務合同事務所

相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。

しょうだ かずき庄田 和樹

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司法書士の庄田と申します。
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家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
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