処分の難しい不動産を相続した場合の対処法 その5
はじめに
処分困難不動産シリーズも最終のその5になりました。今回は最終回に相応しく、共有の土地と借地権という処分困難として代表的でありながら、説明するのが大変で難しいので後回しになっていた不動産についてお話ししていきます。
ケース10 共有の土地
最近電車に乗ると「共有の土地の持分そのまま買い取ります」という広告をよく見ます。一昔前は共有持分を買い取るのは怪しい不動産業者やブローカーだけでした。というのも、共有持分で売るということは共有者間で争いがあって全体で売れない状態であるということであり、共有持分に対しては金融機関が融資をしてくれないので普通の不動産業者は買えない物件であるからです。
買い取ってくれるなら所有者からすると売れていいじゃないか、というとそう簡単な問題ではありません。
共有持分を買い取った業者がすることは、順に、①裁判外での交渉、②共有物分割裁判、③任売又は形式競売となります。
交渉では、業者は残りの持分を買い取らせてくださいORうちの持分を買い取ってくださいOR一緒に売却しましょう、という提案をします。うまくいかなければ共有物分割の裁判に進み、裁判上で和解できればよし、無理でも最終的には競売になり、自己競落するか、買った時の金額以上で売れればよしとなります。最近持分を買い取る業者が増えたのは、普通の物件が高騰しているということもありますが、最終的に競売に持ち込むことで損なく処分することができるという見通しを立てやすくなったためと考えられます。
いずれにせよ、先に売却した共有者は残された共有者に恨まれる可能性大です。親族であれば親族関係は破綻すると言っていいでしょう。この感情的な問題が共有土地の処分を難しくしています。それでも、もう関わり合いになりたくないというような場合には持分での売却も一つの選択肢です。また、自分で共有物分割裁判等をすることも可能です。
元々親族で持分を共有していた土地に相続が発生した場合、問題は更に複雑になります。上記の共有物特有の問題の前提として、遺産相続の調停等を終わらせてから共有物の問題を解決する必要があるからです。そうすると、相続の権利自体と元々の共有持分を一緒に売るといったこともあります。
弊所でも共有持分の処分のご相談はかなり多くあり、相続の裁判と共有物分割裁判で5年近く争っているケースもあります。大体の場合で一部の共有者は自己使用したい、残りの共有者は売って現金にしたいという場合が多いです。一律に解決策はなく、ケースバイケースですが、共有者間でのコミュニケーションをしっかりしておかないと後々トラブルになることが多いため、面倒でもお付き合いは大切だなと思う次第です。
参考までに、弊所のホームページで一番閲覧されているページが共有物分割の登録免許税に関するコラムです。いかに皆様が共有の不動産を解消したいというお悩みを持っているかわかります。
https://touki-sogo.jp/column/touki/608/
ケース11 借地権付き建物
借地権付き建物とは、土地は借り物で、建物は自分で所有している状態を総称しています。借地権付き建物は譲渡やリフォーム、建て替えなどに大きな制限があり、普通に自分の意志で自由にできる所有権の物件に比べると価値が下がります。とはいえ、都内だと戸建てでも数千万~数億円の物件もありますので、一概に安いわけではありません。借地権という権利は借地借家法という法律で基本的な決まりがあり、詳細は更に契約によって決まるため、契約内容と土地の所有者がどんな人であるかによって処分の難易度が大幅に変わります。また、交渉が必要な事項が多岐に渡るため、詳しい仲介業者に依頼することをお勧めします。しかし、後述しますが、借地権の売買を積極的にしたがる仲介業者はいません。
なお、旧法借地権と新法借地権がありますが契約期間以外はそれほど大きな違いはないのでここでは区別していません。
■地主が財務省等の場合
地主が財務省等の場合、相続財産の処分という観点から言うと最高です。なぜなら、基本的には財務省は借地権の管理をしたくないので、払下げという手続きをすることで土地を買い取って所有権にすることができるからです。自分で払下げ手続きをして普通の所有権にしてから売却してもいいですし、お金が無い場合は同時に借地権付き建物と財務省所有の土地を同時に売却することも可能です。
弊所で実際に有ったケースで、払下げが間違いなくできるという前提で相続した借地権付き建物を非常に高額で売却できたことがあります。相続人の方で払下げをしてもよかったのですが、測量等で時間が掛かることから不動産業者に買い取ってもらって業者さんの方で払下げして欲しいというご希望でした。弊所で調査から業者さんの払下げ手続きまでを一括してお引受けしたので業者さんからも安心して取引いただけました。
■地主が一般人の場合
地主が一般人の場合、基本的にはラッキーです。というのも、前述したように借地権付き建物が一番高く売れるのは底借同時売却をする場合だからです。まずは一緒に売却してくれるか打診します。しかし、そう都合よく一緒に売ってあげてもいいよと言ってくれる優しい地主さんばかりではありません。売ってくれないだけなら仕方ありませんが、中には意地悪な地主さんもいて、譲渡を認めない、譲渡承諾料は沢山払え、契約の分割は認めない、ローン承諾の印鑑は押さないetc.と言われると処分の難易度が上がり、売却額も低くなってきます。
■地主がお寺の場合
地主がお寺の場合、基本的にはアンラッキーです。なぜなら、ほぼ間違いなく底地を売ってくれることはないからです。この時点で借地権付き建物として売却するしかなくなります。次に、優しい対応のお寺か銭ゲバのお寺かで分かれます。優しいお寺の場合、借地権の譲渡にも慣れていて、諸々の諸条件の交渉にもある程度応じてくれます。銭ゲバのお寺の場合、非常に高い譲渡承諾料、根拠のない譲渡先の制限、一ミリも交渉に応じてくれない態度と周囲では大体評判になっています。またある程度の規模のお寺の場合、べったり密着している不動産業者がいることが大半です。これは借地権の更新の度にお寺が自身で手続きするのが大変であること、譲渡承諾料を高めに請求したり更新料を多めに請求したりすることをお寺自身がすると悪評が立ってしまうので身代わりが必要なことなどからそういう形になっています。結局そこで不動産業者も利益を取りますので、結果、売却金額は大幅に安くなってしまいます。
■仲介業者の立場から
地主が一般人であろうと、お寺であろうと、借地権付き建物の売買は仲介業者からすると好まれません。なぜなら、やることが3倍以上になるのに報酬は約6割しかもらえないからです。
やることが増えるというのは、借地権特有の問題がいくつもあり、交渉ごともあるためです。
・そもそも譲渡承諾をもらえるか
・譲渡承諾料はいくらか
・大きすぎる借地の場合契約を分けられるか
・譲渡後の契約条件はどうするか
・購入する人のローンの承諾をもらえるか(銀行が地主の承諾書を要求してきます)
・直近で更新している場合、譲渡承諾料に更新料を加味してくれるか
・買主が不動産業者の場合、転売する際には譲渡承諾料は掛からないか
ざっと数えただけでこれだけあります。更に、承諾してくれないと借地非訟手続きと言って裁判類似の手続きを裁判所ですることになり、こうなると売却額は雀の涙です。
交渉がうまくいったとしても、借地権付き建物の価格は所有権の場合よりざっくり4割ほど安いので、労力に見合いません。よって借地権に強い仲介業者というのは弊社の様に士業の案件を多く取り扱っている会社くらいで、ほとんどの会社は借地権の仕組みすら知りません。
(文責:神楽坂法務合同事務所 庄田)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 東京都エリア担当
所属:司法書士法人 神楽坂法務合同事務所
相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。
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家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
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残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
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