相続放棄は慎重に(1)
遺産を取得しない場合は「相続放棄」をしないとならないのか?
「相続人の誰々にすべての遺産を相続させたいので、私は『相続放棄』します」とおっしゃる相談者の方がよくいらっしゃいます。よくよくお話をうかがってみると、相談者がおっしゃる「相続放棄」とは、「私は何の財産も相続しません」という意思表示を意味しているということもあります。
ここでご注意いただきたいのは、民法で定められた「相続放棄」とは、「相続人が被相続人(亡くなった方)の権利や義務を一切受け継がない」ということを家庭裁判所へ申述するもの、ということです。そして、家庭裁判所への申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。これは、遺産分割協議(遺産をどのように分けるかという相続人間の話し合い)の中で「私は何の財産も相続しません」と意思表示することとは異なります。
また、特定の相続人にすべての遺産を相続させたい場合は、そのように遺産分割協議をすればよく、「遺産を取得しない相続人が家庭裁判所への『相続放棄』の申述を必ずしなければならない」というわけではありません。
このことを知らずに(あるいは誤解して)家庭裁判所へ「相続放棄」の申述をしてしまったため、相続手続が意図せずに複雑・困難になってしまう場合があります。
母だけに相続してもらいたかったため、「相続放棄」をしたが……
※以下の事例は実際の事例を加工して作成したフィクションです。
波平さんが亡くなり、相続人は妻のフネさんと、一人っ子のカツオさん(成人)だったとします。カツオさんは「お父さん(波平)の遺産は、すべてお母さん(フネ)に相続してもらいたい」と考えており、フネさんもカツオさんの考えに賛成しました。
この場合、フネさんとカツオさんとの間で、「すべての遺産をフネさんが相続する」という遺産分割協議を行い、その内容を書面化した「遺産分割協議書」を相続手続に使用すればよいと考えられます。
しかし、もし、カツオさんが「お母さん(フネ)に相続させるために、自分が相続放棄をしなければならない」と考え、家庭裁判所へ相続放棄の申述をして受理されたとき、フネさんだけが相続人になるのでしょうか。
正解は、「フネさんと、『波平さんの親』または『波平さんの兄弟姉妹』」が波平さんの相続人となります。その理由は次回にご説明いたします。
(文責 司法書士 小林あき)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 長野県エリア担当
所属:NK司法書士事務所
長野県安曇野市と松本市の境目にある司法書士事務所です。
相続のご相談を多数受けてきた経験から感じることは、多くの方が、ご相続が発生して初めて「何をどうすればいいのだろう」と疑問・不安をお持ちになるということです。ご相続が発生すると、大切な方との別離という悲しみの中、多くの慣れない事務処理をしなくてはならないため、相続人の方の精神的なご負担が大きなものとなります。
当事務所では、相続のお手続きが少しでもスムースに進むようにアドバイスやサポートをさせていただきます。また、お元気なうちから「万が一の時」に備えてどのような対策を取っておけるのかを考えたい方も、是非ご相談ください。
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