相続コラム

所有者不明土地管理命令について

「所有者不明土地管理命令」とは

所有者を特定する事ができない、またはその所在を知ることができない土地(共有の場合には共有持分)や建物について、管理の必要性があるときに、裁判所が管理人(所有者不明土地管理人)を選任し、その土地の管理を命令する処分をする事を可能とするものです。令和5年の民法改正によって創設されました。

所有者不明土地問題として、所在不明となっていたり、所有者を特定する事が出来ず、所有者自身による管理が不十分で、適切な管理ができないという社会的問題がありました。
こうした問題に対処しようとする制度です。

例えば、隣地の管理が不十分で草木が生い茂ったり、自分の所有地に妨害状態が生じる恐れがある場合、隣地の所有者に対し、妨害状態の排除や予防を請求することが出来ます。しかし、隣地の所有者の所在が不明だと、請求の対応が出来ない可能性があります。
このような場合に、所有者不明土地管理制度を利用し、選任された所有者不明土地管理人に対し、妨害排除や予防を請求することができるようになります。

実際の利用方法

では実際に、どのような場合に所有者不明土地管理制度を利用できるのでしょうか。

下記2点が要件としてあげられます。
① 所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地であること。
② 必要があると認められること。

この制度を利用できるのは、「利害関係人」及び「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」です。「利害関係人」についてみると、どのような人が「利害関係人」当たるかは法律には明記されていないのですが、単なる隣人は「利害関係人」含まれないものの、隣地の管理不全状態により悪影響を被っている者は「利害関係人」当たると考えられています。

「利害関係人」等は、裁判所に対し、所有者不明土地管理命令の申立を行い、裁判所は「必要があると認めるとき」に所有者不明土地管理命令を発令し、所有者不明土地管理人が選任します。

このようにして、所有者不明土地管理人が選任されると、当該土地等の管理処分権は、所有者不明土地管理人にのみ帰属することになります。また、所有者不明土地管理人は、裁判所の許可を得れば、当該所有者不明土地の所有者の同意がなくても、対象土地を売却することが出来ます。

新制度により所有者不明土地を買受けを希望する者が同制度の申立てを行い、管理人から買受けることによって、土地利用の活性化にもつながると期待されています。

                                   文責:庄田

参考条文

第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令
(所有者不明土地管理命令)
第二百六十四条の二 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。
2 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。
3 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。
(所有者不明土地管理人の権限)
第二百六十四条の三 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)
第二百六十四条の四 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。
(所有者不明土地管理人の義務)
第二百六十四条の五 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。
2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。
(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)
第二百六十四条の六 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。
2 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
(所有者不明土地管理人の報酬等)
第二百六十四条の七 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

このコラムの監修者

しょうだ かずき庄田 和樹
司法書士
東京都エリア担当
所属:司法書士法人 神楽坂法務合同事務所

相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
司法書士の庄田と申します。
司法書士事務所を開業してから約10年、相続のお問い合わせは年々増えています。
家族仲がよく、全く揉めることなく終わる相続は大体2割くらいです。
法的、税務的に問題がある場合もありますし、感情的な問題がある場合も多くあります。
残念ながら日本では生きているうちに自分が亡くなった後のことをきちんと整理しておこうと積極的に行動される方はまだ少数派です。
遺言を書く、保険に入っておく、不動産を分割しやすいように整理しておくなど、終活は残される方への愛情だと思います。
相続太郎というキャラクターは相続のことを話すハードルを下げるために作りました。
お気軽に、まずはご相談下さい。

しょうだ かずき庄田 和樹

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