相続コラム

家督相続とは?

家督相続とは、家を継承する人(家督相続人)が一括して財産を受け継ぐ、旧民法(1898年施行)に基づいた相続制度です。この制度のもとでは、家を維持・発展させることが重要視され、財産分与よりも家の存続が優先されていました。

主な特徴

1. 家督相続人が全財産を相続する
家督相続では、家督相続人が財産や土地、権利義務を一括して引き継ぎます。他の相続人には原則として分配は行われません。
2. 長男優先の仕組み
家督相続人は原則として家の長男が選ばれました。これは、家を継ぐ役割を長男に担わせるという社会的慣習に基づいています。
3. 分家との関係
長男以外の子どもは「分家」として別の戸籍を作る場合が多く、相続対象となる家の財産からは基本的に除外されることが一般的でした。

家督相続の対象となったもの

家督相続では、以下の財産や権利義務が一括して相続されました。
● 不動産(土地や家屋)
● 家業(農地や商店などの事業資産)
● 先祖代々の祭祀財産(仏壇や墓など)
● 家族を養う責務や借金などの負債
これらの財産や義務を継承することで、家を次世代へと引き継ぐことが目的とされました。

家督相続の廃止と現行制度

家督相続は、1947年に現行の民法が施行された際に廃止されました。この背景には、戦後の日本が家制度を廃止し、個人の権利を尊重する社会へと移行したことがあります。

現行制度との違い
1. 個人単位での相続
現行の相続制度では、家の存続を前提とせず、被相続人の財産を法定相続人全員で分割します。
2. 平等な相続分
家督相続では長男がすべてを継承しましたが、現在では子どもたち(直系卑属)は全員平等に相続分を持ちます。
3. 遺言の活用
家督相続では遺言の影響は少なかったですが、現行制度では遺言が法定相続分よりも優先されます。

家督相続に関連する現代の話題

家督相続そのものは廃止されていますが、その名残を感じさせる慣習や問題が一部で残っています。
1. 跡取りの意識
地方や伝統的な家系では、長男が家を守るべきだという意識が残っている場合があります。これがトラブルの原因となることも少なくありません。
2. 祭祀財産の扱い
家督相続で一括して継承されていた仏壇や墓地などは、現行制度でも特別な扱いがされており、特定の相続人(祭祀承継者)が継承することが一般的です。
3. 不動産の分割問題
家督相続では不動産が一括して継承されていましたが、現行制度では不動産を分割して相続するケースが増え、活用が難しくなる場合もあります。

まとめ

家督相続は、家を中心とした社会を維持するための制度として機能していましたが、現行の相続制度では廃止されています。現在では、すべての相続人が平等な権利を持ち、家という枠組みよりも個人の権利が尊重される形に移行しています。しかし、家督相続の考え方が残る場面もあり、現代の相続にも影響を与えています。相続の際には、家督相続の歴史や現行制度の違いを理解し、専門家に相談しながら適切な手続きを進めることが大切です。
(文責:司法書士 金光 康太)

このコラムの監修者

かなみつ こうた金光 康太
司法書士
大阪府エリア担当
所属:司法書士法人LSO

司法書士法人LSOは、大阪市北区に拠点を置く司法書士事務所です。
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