一人株主・取締役に相続が発生したら
株式会社を経営しているAさんが亡くなったが、Aさんが唯一の「株主」であり唯一の「取締役」だったという場合があります。
Aさんの死亡により、株主や取締役の地位はどのように引き継がれるのでしょうか。
株主の地位と取締役の地位に分けて考えてみましょう。
株主の地位について
株式は、他の財産(不動産や預貯金など)と同じくAさんの相続財産となります。
ですので、遺言書があった場合は遺言書に従い、遺言書がない場合は相続人間の遺産分割協議によって相続する人を決めます。
取締役の地位について
一方で、取締役の地位は、Aさんの相続財産とはなりません。これは、会社と取締役との関係が「委任関係」にあたり、取締役(受任者)の死亡により委任関係が当然に終了するためです(会社法第330条、民法第653条)。
よって、唯一の取締役であるAさんの死亡により取締役が不在となってしまいますので、新たな取締役を株主総会で選任する必要があります。
株主総会の招集について
取締役が存命であれば、原則的には取締役が株主総会を招集します。しかし、唯一の取締役であるAさんが亡くなっている場合は、取締役が株主総会を招集することができません。このような場合、株主全員の同意があれば、株主総会を開催することができます(会社法第300条)。
遺産分割が未了の場合について
株主総会の基準日時点で、Aさんが持っていた株式を誰が相続するか決まっていなかった場合(遺産分割が未了の場合)はどうなるのでしょうか。
この場合は、相続が開始してから遺産分割までの間、株式を「相続人全員」で「共有(準共有)」することとなります(民法第898条)。
そして、複数の相続人によって株式が共有されている場合、株式についての「権利行使者」を定め、会社に対してその者を通知することで権利行使をすることができます(会社法第106条)。
ですので、遺産分割が未了の場合でも、権利行使者が株主総会で新たな取締役を選任することができます。
役員変更登記が必要です
株式会社の取締役は登記されています。登記事項に変更が生じた場合は、変更が生じてから2週間以内に登記申請しなければならないと定められています。期間内に登記申請をしない場合、過料に処せられる可能性があります(会社法第976条第1号等)。
以上のように、唯一の株主・取締役が亡くなった場合、早急に新たな取締役を選任し、登記する必要があります。
上記でご紹介した内容は原則的な内容となります。会社の状況によっては異なる部分もありますので、個別の事案につきましてはぜひ司法書士にご相談ください。
(文責 司法書士 小林あき)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 長野県エリア担当
所属:NK司法書士事務所
長野県安曇野市と松本市の境目にある司法書士事務所です。
相続のご相談を多数受けてきた経験から感じることは、多くの方が、ご相続が発生して初めて「何をどうすればいいのだろう」と疑問・不安をお持ちになるということです。ご相続が発生すると、大切な方との別離という悲しみの中、多くの慣れない事務処理をしなくてはならないため、相続人の方の精神的なご負担が大きなものとなります。
当事務所では、相続のお手続きが少しでもスムースに進むようにアドバイスやサポートをさせていただきます。また、お元気なうちから「万が一の時」に備えてどのような対策を取っておけるのかを考えたい方も、是非ご相談ください。
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