不動産の時効取得と相続について(1)
被相続人(お亡くなりになった方)の不動産を調査していると、「被相続人が長年使用していた不動産が、まったくの別人の名義だった」というケースに遭遇することがあります。
例えば、次のようなケースです。
被相続人(お亡くなりになった方)…Xさん
Xさんの相続人…X1さん
甲土地の所有者(登記上の所有者)…Yさん
Yさんの相続人…Y1さん
・平成×年、Xさんは自分の土地だと信じて、甲土地を占有し始めた(登記上の所有者はYさんだった)。
・平成△年、Yさんが亡くなった。
・令和●年、甲土地を占有し続けたまま、Xさんは亡くなった。その後はX1さんが甲土地を占有している。
Xさんが長年占有してきた甲土地ですが、登記上の所有者はYさんのままであるため、「相続」を原因としてYさんからX1さんに所有権移転登記をすることはできません。X1さんはYさんの相続人ではないためです。
それでは、Xさんの相続人のX1さんは、どうすれば甲土地の所有者になれるのでしょうか?
このようなケースでは、一つの方法として「時効取得」を主張するということが考えられます(※ただし、個別のケースにおいて、時効取得を主張することが適切かどうかは専門家にご相談ください)。
「時効取得」とは
民法第162条は「所有権の時効取得」について規定しています。第1項には「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」とあります。第2項では時効取得までの期間が「十年」になる場合について定められています。
上記の要件を満たしたうえで、占有者が所有者に対して「時効援用の意思表示」をすることができます。
事例のXさんの場合、XさんがYさんに「時効援用の意思表示」をしたうえで、XさんとYさんとで協力しあって法務局への登記手続をすれば、YさんからXさんへと所有権が移転します(=Xさんが登記上の名義人となります)。
しかし、XさんもYさんもすでに亡くなっており、亡くなった方は登記手続を行うことができません。
このように、当事者が亡くなっている場合はどうすればよいのでしょうか?
次回に続きます。
(文責 司法書士 小林あき)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 長野県エリア担当
所属:NK司法書士事務所
長野県安曇野市と松本市の境目にある司法書士事務所です。
相続のご相談を多数受けてきた経験から感じることは、多くの方が、ご相続が発生して初めて「何をどうすればいいのだろう」と疑問・不安をお持ちになるということです。ご相続が発生すると、大切な方との別離という悲しみの中、多くの慣れない事務処理をしなくてはならないため、相続人の方の精神的なご負担が大きなものとなります。
当事務所では、相続のお手続きが少しでもスムースに進むようにアドバイスやサポートをさせていただきます。また、お元気なうちから「万が一の時」に備えてどのような対策を取っておけるのかを考えたい方も、是非ご相談ください。
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