不動産の時効取得と相続(2)
前回に続き、以下の事例を考えていきます。
被相続人(お亡くなりになった方)…Xさん
Xさんの相続人…X1さん
甲土地の所有者(登記上の所有者)…Yさん
Yさんの相続人…Y1さん
・平成×年、Xさんは自分の土地だと信じて、甲土地を占有し始めた(登記上の所有者はYさんだった)。
・平成△年、Yさんが亡くなった。
・令和●年、甲土地を占有し続けたまま、Xさんは亡くなった。その後はX1さんが甲土地を占有している。
X1さんは、甲土地の所有権について「時効取得した(していた)」と主張したい(=時効の援用をしたい)のですが、本事案のように当事者が亡くなっている場合は、相続人が手続きをしていくことになります。
ただし、時効の起算日(Xさんが占有を開始した日)や時効の完成日・援用日と、相続の発生時期によって必要となる登記手続が異なります。
土地所有者・占有者のそれぞれに分けて考えていきます。
1.所有者に相続が発生している場合について
①時効の起算日「前」に相続が発生しているとき
時効の起算日前に、Yさんが亡くなっている場合は、「YさんからY1さんへの相続登記」を経たあとで、「Y1さんから占有者への所有権移転登記」を行います。
②時効の起算日「後」に相続が発生したとき
時効の起算日後に、Yさんが亡くなった場合は、「YさんからY1さんへの相続登記」をすることなく、「占有者への所有権移転登記」を申請できます。
2.占有者に相続が発生している場合について
①時効完成「前」に相続が発生しているとき
Xさんの時効完成前に、Xさんが亡くなっている場合は、占有を承継したX1さんに所有権移転登記をすることができます。
②時効完成「後」に相続が発生しているとき
Xさんの時効完成後、Xさんが時効援用をする「前」に亡くなっている場合は、X1さんに所有権移転登記ができる場合があります。
Xさんの時効完成後、Xさんが時効援用をした「後」に亡くなっている場合は、まず所有者からXさんに所有権移転を行った後、XさんからX1さんに相続登記を行います。
このように、一口に「時効取得」と言っても個別のケースに応じて手続が異なってきます。また、所有者や所有者の相続人の協力が得られない場合は、裁判を行うことも考えられます。さらに、そもそも「時効取得が可能か・適切かどうか?」などの検討も必要です。時効取得に関する疑問はぜひ専門家までご相談ください。
(文責 司法書士 小林あき)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 長野県エリア担当
所属:NK司法書士事務所
長野県安曇野市と松本市の境目にある司法書士事務所です。
相続のご相談を多数受けてきた経験から感じることは、多くの方が、ご相続が発生して初めて「何をどうすればいいのだろう」と疑問・不安をお持ちになるということです。ご相続が発生すると、大切な方との別離という悲しみの中、多くの慣れない事務処理をしなくてはならないため、相続人の方の精神的なご負担が大きなものとなります。
当事務所では、相続のお手続きが少しでもスムースに進むようにアドバイスやサポートをさせていただきます。また、お元気なうちから「万が一の時」に備えてどのような対策を取っておけるのかを考えたい方も、是非ご相談ください。
長野県安曇野市と松本市の境目にある司法書士事務所です。
相続のご相談を多数受けてきた経験から感じることは、多くの方が、ご相続が発生して初めて「何をどうすればいいのだろう」と疑問・不安をお持ちになるということです。ご相続が発生すると、大切な方との別離という悲しみの中、多くの慣れない事務処理をしなくてはならないため、相続人の方の精神的なご負担が大きなものとなります。
当事務所では、相続のお手続きが少しでもスムースに進むようにアドバイスやサポートをさせていただきます。また、お元気なうちから「万が一の時」に備えてどのような対策を取っておけるのかを考えたい方も、是非ご相談ください。