相続コラム

相続した実家の「空き家問題」どうする?放置リスクと4つの選択肢、税金まで専門家が解説

はじめに

「親が住んでいた実家を相続したものの、自分は遠方に住んでおり、どう活用すれば良いか悩んでいる」 「当面は利用する予定がないので、ひとまず現状のままにしておこう」

このような状況で、相続した不動産が空き家として放置されるケースが、全国的に増加し、深刻な社会問題となっています。総務省の調査によれば、国内の空き家総数は約900万戸に達しており、今後も増加が見込まれています。しかし、空き家を適切な管理なく放置することには、想定以上の法的・経済的リスクが伴います。固定資産税といった維持費が発生し続けるだけでなく、建物の老朽化による倒壊や、第三者による不法侵入・放火といった犯罪を誘発する危険性も指摘されています。

本記事では、相続した空き家を放置することの危険性を整理し、その具体的な解決策として「売却」「賃貸」「自己使用」そして「民泊」という4つの選択肢、さらに関連する税制について、専門家の視点から解説いたします。

空き家を放置することの潜在的リスク

空き家を適切な管理なく放置した場合、以下に挙げるような複数の問題が発生する可能性があります。

  1. 継続的な経済的負担 不動産を所有している限り、その利用状況に関わらず、毎年「固定資産税」および「都市計画税」が課税されます。これに加え、火災保険料や、庭木の剪定・除草といった定期的な維持管理費用も発生します。遠隔地に所有している場合は、現地へ赴くための交通費も考慮する必要があり、これらは所有者にとって継続的な経済的負担となります。
  2. 建物の劣化と倒壊の危険性 人の居住がない建物は、換気が不十分になることで湿気が滞留し、カビの発生や構造材の腐食を招きます。また、雨漏り等の不具合が発見されにくく、シロアリ被害が進行する可能性も高まります。結果として建物の劣化は加速し、台風や地震等の自然災害によって倒壊し、隣接する家屋や通行人に被害を及くした場合には、所有者として損害賠償責任を問われるケースもあります。
  3. 地域の安全・防犯への悪影響 管理されていない空き家は、外観の荒廃から不法侵入や不法投棄の対象となりやすく、また放火等の犯罪を誘発する温床となる危険性があります。これらの事象は、周辺地域の治安を悪化させ、近隣住民との関係悪化を招く一因ともなり得ます。
  4. 「特定空家等」への指定と行政からの措置 著しく保安上危険、または衛生上有害となる状態にある空き家は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、行政から「特定空家等」に指定されることがあります。指定を受けると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が最大で6倍に増加する可能性があります。さらに、行政からの助言・指導、勧告、命令に従わない場合、最終的には行政代執行によって強制的に解体が行われ、その費用が所有者に請求されるという厳しい措置が講じられます。

相続した空き家の活用に関する4つの選択肢

相続した空き家への対処法として、主に以下の4つの選択肢が考えられます。それぞれのメリット・デメリットを比較検討することが重要です。

選択肢1:売却する

最もシンプルで、多くの方が選ぶ解決策です。

  • メリット: 不動産を現金化でき、固定資産税や維持管理の負担から完全に解放されます。遺産分割協議において、複数の相続人で遺産を分割する際も、現金は公平な分配が容易です。
  • デメリット: 被相続人との思い出が残る不動産を手放すことへの心理的な抵抗感が考えられます。また、仲介を依頼する不動産会社の選定や内覧対応といった手間を要し、売買契約成立までには一定の期間が必要です。建物の状態によっては、解体して更地にすることが売却の条件となる場合もあります。
  • 関連税制: 売却によって譲渡益が生じた場合、「譲渡所得税」が課税されます。ただし、一定の要件を満たすことで、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受けられる可能性があり、その場合、譲渡所得から最高3,000万円が控除されます。
選択肢2:賃貸する

リフォーム等を施し、賃貸物件として収益化を図る方法です。

  • メリット: 定期的な家賃収入というインカムゲインを得ることが可能となり、不動産という資産形態を維持できます。
  • デメリット: 賃貸に出すためには、多くの場合、修繕やリフォームへの先行投資が必要です。また、入居者の募集、家賃滞納リスク、入居者間のトラブル対応といった賃貸経営に伴う諸問題に対処する必要があり、管理会社へ委託する場合は管理手数料が発生します。
選択肢3:自分で住む(または利用する)

相続人自身またはその家族が居住、あるいはセカンドハウスとして利用する方法です。

  • メリット: 新たな住居費の発生を抑制でき、被相続人との思い出が残る不動産を有効活用できます。
  • デメリット: 所有者の勤務地や生活拠点との地理的な問題が生じる場合があります。また、現代の生活水準に合わせた快適な居住環境を確保するためには、断熱改修や耐震補強といった大規模なリフォームが必要となるケースも少なくありません。
選択肢4:民泊として活用する

短期の旅行者などに宿泊施設として提供する方法です。

  • メリット: 通常の賃貸よりも高い収益を上げられる可能性があります。また、自分が利用しない期間だけ貸し出すなど、柔軟な運用が可能です。
  • デメリット: 住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出や許可が必要です。自治体によっては営業日数に上限(年間180日など)が設けられている場合があります。また、宿泊者ごとの清掃やチェックイン・アウト対応など、運営の手間が格段に増えます。
  • 関連税制: 民泊で得た収入は、原則として「雑所得」または「事業所得」として確定申告が必要です。

【新たな選択肢】相続土地国庫帰属制度

前述のいずれの活用も困難な場合の「最後の手段」として、2023年4月27日より「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。これは、一定の要件を満たす土地の所有権を国に引き取ってもらう制度です。ただし、土地上に建物が存在しないこと、土壌汚染や埋設物がないこと等の厳しい審査基準が設けられており、承認された場合でも10年分の土地管理費相当額として負担金(最低20万円~)を納付する必要があります。

まとめ

相続した空き家への対処法は、相続人のライフプラン、他の共同相続人との協議内容、そして対象不動産の物理的・法的な状況によって、最適な答えが異なります。各選択肢に伴う税務上の取り扱いを正確に理解するためには、専門的な知見が不可欠です。

「何から着手すべきか判断できない」「税務上の影響が不明確である」といった場合には、早期に専門家へ相談することをお勧めします。その際、固定資産税の課税明細書や登記事項証明書(権利証)をご用意いただくと、より具体的かつ的確な助言が可能となります。

当ウェブサイト「相続太郎」では、不動産相続に精通した司法書士や税理士の紹介も行っております。貴重な資産が、管理の負担が大きい「負動産」とならないよう、計画的な対応をご検討ください。

このコラムの監修者

そうぞくたろう相続太郎
相続サポートの案内人
東京都エリア担当

相続太郎のホームページをご覧いただきありがとうございます。
相続を愛し、相続に愛された男!相続太郎だ!
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その疑問や不安をわかりやすく、丁寧に伝えるのが私の"使命"です。
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