公正証書遺言と徹底比較!自筆証書遺言の4つのメリット
相続に備えて遺言書を残したい――そう考えたとき、公正証書遺言と並んで検討されるのが『自筆証書遺言』です。
自ら筆をとり保管まで行うこの方式は、費用も最低限で済み気軽に始められるところがメリットです。では、公正証書遺言とは、一体どんな違いがあるのでしょうか。
その1――費用がほとんどかからない
公正証書と比較したうえでの最大の利点は、何よりも**費用の面**です。公正証書遺言の場合、作成時に必ず公証人の手数料が必要になります。
一方、自筆証書遺言の場合、必要なのは「紙とペンと印鑑」だけですので、費用のことを気にする必要がありません。実務上は実印で押印し印鑑証明書と併せて封筒に入れて保管することが多いですが、その場合も印鑑証明書の取得費用(数百円程度)や封筒代が増えるだけですので、**非常に安価で作成できる**ことに変わりはありません。
その2――いつでも作成できる
その1で挙げた道具さえあれば**いつでも作成ができる**のも、大きな利点です。公正証書遺言の場合は、平日の日中かつ公証人のスケジュールが空いている時間にしか作成ができません。また、基本的に公証役場に出向く必要があります。
一方で、自筆証書遺言は、思い立ったらいつでも作成することができます。とはいえ、形式や内容にも厳しいルールがあるので、思いついた部分から好きに書くようなことはできません。
その3――内容は誰にも知られない
自筆証書遺言の場合、厳重に保管をしていれば、自分が死亡するまで**誰にも内容を知られることはありません**。公正証書遺言の場合は、公証人に加え、証人2人には内容が知られてしまうことになります。
ただし、内容を知られたくないからといって、しまいこんでしまうのはNGです。せっかく書いた遺言が誰にも見つけてもらえないともったいないですからね。
手軽さその4――変更や撤回が容易
人物関係や資産状況、そして気持ちの変化があれば、遺言書を書き直す必要があります。例えば、
- 「『夫に全財産相続させる』という遺言書を書いていたのに、夫に先立たれてしまった」
- 「『長女と二女に2分の1ずつ相続させる』という遺言書を書いていたが、二女が身の回りの世話をしてくれているので、長女3分の1・二女3分の2に変えたい」
というような場合が挙げられます。
公正証書遺言の場合、再度公証人に手数料を支払って変更をする必要があります。また遺言自体をなかったことにしたいときは、撤回の手続きをとらなくてはなりません(原本は公証役場にあるため、手元の遺言書を捨てても意味がありません)。
一方、自筆証書遺言の場合は、**改めて書き直せばいいだけ**です。撤回も、シュレッダーにかけてしまえば終わりです。ただしその分、第三者が勝手に改ざん・処分する危険と隣り合わせであることを忘れないでください。
まとめ
以上が、公正証書遺言と比較したときの自筆証書遺言のメリットです。
【公正証書遺言】
内容や形式が正確で改ざん・汚損の危険もなく相続手続時の手間はかからないが、費用と作成の手間がかかる
【自筆証書遺言】
費用がかからず好きなタイミングで作成できるが、内容や形式の正確性が担保できず、相続手続時に別途手続きが必要になる
双方のメリット・デメリットをふまえた上で、どちらを選択するかを慎重に検討していただければと思います。
なお、私たち司法書士のような法律の専門家に内容・形式の添削を依頼したり、法務局の保管制度を用いたりすることで、自筆証書遺言のデメリットを減らすことができますので、お気軽にご相談ください。