公正証書と自筆証書、何が違う?│公正証書編
公正証書遺言の4つの安心点とは?費用がかかるメリットを徹底解説
相続に備えて遺言書を残したい――そう考えたとき、自筆証書遺言と並んで検討されるのが『公正証書遺言』です。公証役場で公証人が作成し、原本を厳重に保管するこの方式は、費用がかかるぶん安心感も強いです。では具体的にどこが“安心”なのでしょうか。
安心点その1――遺言執行までのスピード
最大の利点は、遺言者が死亡してから遺言執行手続きに移るまでのスピードです。自筆証書遺言の場合に必要な家庭裁判所での検認が不要なため、遺言者が死亡した後すぐに不動産の名義変更や預金の払い戻しに着手でき、相続人の心理的・時間的負担を大幅に軽減できます。
安心点その2――争いを防げる
二つ目は、「遺言能力(遺言の内容を理解・判断できるか)」についての争いを防ぐことができる点です。公正証書を作成するにあたり、公証人と証人二名が遺言能力や遺言の内容を確認します。そのため、遺言者が死亡した後の無効主張、例えば「認知症だったから作成できるはずがない」「筆跡が違う」といった訴えがほぼ通りません。家族間の疑心暗鬼や争いを最小限に抑えられます。
安心点その3――壊れない
三つ目は“壊れない”ことです。公正証書遺言の原本は公証役場に半永久的に保管され、遺言者や相続人には正本・謄本が交付されます。もし正本が水害や火災で消失しても、公証役場に申し出ればいつでも再発行が可能です。
実際に、熊本県内で発生した災害によって公正証書が汚損されてしまったという相談を受けたことがありましたが、無事に再発行ができました。
安心点その4――完成度の高さ
四つ目は完成度の高さです。法律のプロである公証人が条項を整理するため、相続分の指定や遺言執行者の選任、付言事項まで漏れなく盛り込めます。せっかく遺言書を書いたのに、書き方や形式の不備で結局無効になってしまうという最悪の事態を回避できます。さらに、複雑な二次相続対策も盛り込みやすくなります。
まとめ
「自分の死後、家族に負担を掛けたくない。家族に争ってほしくない」という願いを、公正証書遺言が確かに支えてくれます。コストを理由に躊躇する声もありますが、その費用は“争続”を避けるための保険料とも言えます。“想いを確実に届ける”――その一点に価値を見いだすなら、公正証書遺言はもっとも信頼できるツールといえるでしょう。
【本記事のポイント】
- 公正証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要で遺言執行が迅速。
- 公証人や証人が内容を確認するため、遺言の無効主張を防げる。
- 原本が公証役場に半永久的に保管され、消失しても再発行可能。
- 公証人が作成するため、形式不備による無効リスクが極めて低い。
このコラムの監修者
- 司法書士
- 熊本県エリア担当
所属:司法書士法人小屋松事務所
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