遺言を作成した方がよいケース②│子供のいないご夫婦やおひとりさまの場合
「うちにはそんなに財産もないし、遺言なんて必要ない」と思っていませんか?その認識、実は少し違うかもしれません。
たとえ全財産が自宅と預貯金数百万円くらいであっても、「家族・親族関係」や「財産の分け方」に不安がある方は、
遺言を書いておくべきなのです。
書いておくべき場合3種
遺言書を書いておくべき場合と、具体的なケースを紹介していますが、前回(遺言を作成した方がよいケース①)は
「財産の分け方を決めておきたい場合」について解説しました。
- 今回は「子供のいないご夫婦やおひとりさまの場合」
- 次回は「推定相続人の中に海外居住者や認知症の方がいる場合」
について解説していきます。
前提の知識
子供のいないご夫婦やおひとりさま(独身の方、身寄りがいない方等)の場合、遺言書の作成を強くお勧めしています。
というよりも、必ず書いておくべきです。
【補足:法定相続人について】
その理由として、「法定相続人」が大きく関わってきます。法定相続人について、詳しくは以前本HPでアップロードしたこちらの記事をご参照ください。
事例を基に考えてみましょう。太郎さんと花子さんという、子供のいないご夫婦がいたとします(二人とも両親は既に死亡しています)。ある日、花子さんが先に亡くなってしまいました。
花子さんの法定相続人は、「夫の太郎さん」と「花子さんの兄弟/花子さんの兄弟が先に亡くなっている場合は、その子(いわゆる第三順位の相続人)」になります。
つまり、太郎さんからすると、自分たち夫婦で築いてきた財産や自分の家の権利を相続するために、義理の兄弟や義理の甥姪と協議をしなければならないのです。
遺言を書かなかった場合に起こること1――大量の相続人
こういったケースにおいて、どんな不都合があるでしょうか。
まず考えられるのは、相続人が大量に出てきてしまう可能性があることです。特に高齢の方の場合、兄弟が10人近くいるという方もいらっしゃるでしょう。その兄弟のうち亡くなられている方がいらっしゃれば、その子供の数だけ相続人が増えてしまいます。
大量の相続人がいる場合の更なる不都合の一つが、認知症や障害・病気により、意思判断ができない方がいる可能性です。一人でもそういった方が含まれると、遺産分割協議が非常に難しくなります。
また、それだけ相続人がいると、連絡がとれない人が含まれているかもしれません。戸籍を見る限りは生きているが、手紙を送ってもいっこうに返事が来ないということもありえます。
遺言を書かなかった場合に起こること2――思わぬ相続人の登場
他にも不都合は考えられます。親や配偶者に再婚歴があった等の理由で、見ず知らずの人と遺産分割協議をしなくてはならないような状態です。
これまで遭遇したケースでは、以下のようなことがありました。
- 「亡くなった母親に実は再婚歴があり、父親の違う兄弟がいた」
- 「亡くなった夫が再婚歴を隠していて、相続手続自体はスムーズに進んだものの、亡夫に対する不信感が残った」
- 「どうして存在も知らなかった親戚のために自分が書類を提出しないといけないのだと不満を言われ、手続きが進まない」
また、思わぬ相続人が認知症等の可能性もあります。
遺言を書くときの注意点――たすき掛け遺言
これまで見てきたとおり、子供のいない夫婦やおひとりさまの場合、子供がいる夫婦に比べて相続手続の際の懸念点が多くなります。そのため、死後の手続きを簡単にできる遺言書が大きな力を発揮するのです。
ここで注意ですが、子供のいないご夫婦で、まだお二人ともお元気な場合は、必ず「たすき掛け遺言」を作っておきましょう。
たすき掛け遺言とは:
「夫が『自分が先に亡くなった場合は、妻に全財産を相続させる』、妻が『自分が先に亡くなった場合は、夫に全財産を相続させる』とお互いに書いておく遺言」のことです。(※遺言は連名では作成できないので、夫と妻それぞれ1通ずつ遺言を書いておくことになります)
また、配偶者が先に亡くなる場合も想定して、「自分が先に亡くなった場合は、妻に全財産を相続させる。妻が先に亡くなった場合は、自分の甥に全財産を相続させる」というような内容の、「予備的遺言」もあると安心です。
まとめ
子供のいないご夫婦やおひとりさまの場合は、基本的に遺言書を作成しておくべきです。特に以下に該当する場合は、円満な相続を実現するためにも、しっかりと内容を整えた遺言書を作成しておくべきでしょう。
- 兄弟や義理の兄弟の中に遺産分割協議が難しい人がいる
- 今の配偶者との間には子供はいないが、前妻/前夫との間に子供がいる
- 親に再婚歴があり、半血兄弟がいる(いわゆる第三順位の相続の場合、父母の片方が同じ兄弟=半血兄弟も、相続分は半分になるとはいえ相続人に含まれます)
このコラムの監修者
- 司法書士
- 熊本県エリア担当
所属:司法書士法人小屋松事務所
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